【公演レポ】パッパーノ指揮英国ロイヤル・オペラ日本公演！ヴェルディ『リゴレット』にて開幕

CULTURE

2024.06.262024.06.30

6月22日（土）英国ロイヤル・オペラ　ジュゼッぺ・ヴェルディ『リゴレット』初日公演を神奈川県民ホールで鑑賞した。5年ぶりに待望の来日となった英国ロイヤルオペラハウスの初日公演である。英国ロイヤルオペラにとって7度目の来日となり、22年間芸術監督を務めた巨匠アントニオ・パッパーノがROHと協働する最後の機会となる。

(C)Kiyonori Hasegawa

『リゴレット』は、富と権力にものを言わせ放蕩無頼の生活を送るマントヴァ公爵、道化師として公爵に媚びる役柄と娘を愛する父というふたつの顔をもつリゴレット、その娘で純粋一途なジルダを軸に繰り広げられる名作。「女心の歌」「慕わしき人の名は」「悪魔め、鬼め！」など数々の名アリアが登場する一方、美しい重唱が多い作品。第 3 幕の四重唱「美しい恋の乙女よ」は、オペラ史上最も美しい四重唱に数えられている。

リゴレット来日公演は、世界屈指の水準の歌手に恵まれた涙腺崩壊の公演となった。

タイトル・ロールとしてその才能とテクニックにパッパーノが太鼓判を押すエティエンヌ・デュピュイは、聴き手の心を鷲掴みするカナダのバリトン歌手。豊かな声量と表現力・舞台の演技力のバランスが卓越していた。純粋な娘を救うために父親として苦悩する場面や娘の返還を訴えるアリア「悪魔め、鬼め！」に感涙。父の娘に対するひしひしとした愛情を感じさせた。

(C)Kiyonori Hasegawa

世界の歌劇場を席巻しているネイディーン・シエラがジルダ役として登場した。彼女の魅力が最大限に発揮されるレパートリーの一つが『リゴレット』のジルダ役と言われ、叙情的な歌唱は透明感があり、しなやかで滑らか。シームレスなテクニックでコロラトゥーラを完璧にコントロールし、聴き手に無上の喜びを与えた。第１幕のアリア「慕わしき人の名は」の若々しくて可憐、情感豊かなで弾むような極上のソプラノに心が奪われた。

マントヴァ公爵役は日本初登場のハビエル・カマレナ。第3幕の有名なカンツォーネ「女心の歌」では、よく響く圧巻のテノールで観客から喝采を浴びた。ジルダとマントヴァ公爵の二重唱も卓越した出来。主役歌手3名が世界屈指のキャスティングで、世界最高水準の『リゴレット』公演を牽引した。

(C)Kiyonori Hasegawa